製造業

自動車メーカーでも着実に進む電子化。クラウドサインの初期・運用コストの低さに着目

  • 2022年4月27日(水)

トヨタ車体株式会社
総務部 法務・管財室 室長 堀博様
総務部 法務・管財室 山川雅弘様

 

トヨタ自動車の100%子会社として、自動車の企画・開発・生産という一連の工程すべてを担っているトヨタ車体株式会社様。トヨタが自動車製造を開始した当初に創立した企業で、主力製品の1つであるハイエースに代表される商用車をはじめ、乗用車のミニバン、SUVや、福祉車両、特殊車両も手掛けています。

同社は2021年度、電子契約サービスにクラウドサインを選択し、社内活用を広げている。厳格なコスト管理を行う自動車メーカーとして、電子化のためのツール導入にも慎重さが求められるなか、どのようにして社内を説得し、導入へと至ったのか。社内のDXを進めている担当者に話を伺いました。

働き方改革の流れで紙の書類を段階的にデジタル化。電子契約でさらなる工数削減へ

電子契約サービスの導入を検討したきっかけや経緯について教えてください。

山川様

近年、コロナ禍ということもあり、社内のフリーアドレス化やテレワークの導入、ペーパーレスの推進といった働き方改革、デジタル化の動きが世の中で広がっています。当社としても少しずつそれらを進めてきましたが、契約書の締結・管理の部分はずっとアナログのままでした。今の働き方に即した契約締結・管理のやり方を模索する中で、契約の電子化を検討することになりました。

そこで、まずは一連の契約業務のなかでどこから電子化するか、という検討をしました。その結果、2020年度は契約書などの社内申請をワークフローシステムで電子化し、2021年度は契約締結の部分を電子化していくことになりました。

紙書類による契約業務のなかで課題を感じるところはありましたか。

山川様
テレワークを推進しているにもかかわらず、契約締結したい部署の担当者はもちろん、我々総務部も出社が必要になってしまっていた、というのが1つ。契約前の社内申請についても紙の申請書類を社内で回覧する形でしたから、起票や手続きに時間がかかっていたというのが1つです。

また契約書類の保管スペースも圧迫していること、さらに月に数件程度ではありますが、過去の契約内容を改めて確認したいという社内からの問い合わせのときは書庫から探し出さなければなりません。私自身もテレワークで社内にいないことがあるので、出社している総務部の人に連絡してお願いする、といった手間も発生していました。

堀様
そもそも契約書の社内申請のプロセスが煩雑だった、というのも大きな課題になっていたと思います。契約を進める際には各部署が社内申請用に契約書を紙で総務部に提出し、我々がそれをレビューしたうえで、修正が必要なときはその紙に手書きして各部署に戻します。それをもとに改めて相手方と内容を協議して……というのを何度も繰り返していたんです。

その負荷を軽減するために、手始めに社内申請のワークフローを電子化し、契約書のレビューを紙ではなくデータで行えるようにし、ファイルのなかにコメントを入れてやりとりできるようにしました。これだけでも負荷軽減にはかなり高い効果が得られましたが、改めて電子化の良さに気付くことができ、契約書や締結業務そのものも電子化しようということになりました。他のグループ企業からも電子契約サービスがかなり便利という話も聞いていましたから、まずはトライすべきだなと感じました。

国内の圧倒的シェアと低コストが決め手

電子契約サービスにクラウドサインを選んだ決め手は何でしたか。

山川様
先行して電子契約サービスを導入しているグループ会社がありましたので、そちらにヒアリングしたうえで、費用面なども考慮して当社の業務に一番合いそうなツールを選びました。当社は国内企業との契約が多いので、数あるツールの中で国内シェアが圧倒的に高いクラウドサインがぴったりではないかと考えました。

自動車メーカーは原価管理などのコストコントロールが厳しいイメージがあります。ツール導入を会社に認めてもらうのも大変だったのではありませんか?

山川様
我々は普段の業務から、現状の把握と理想的なあるべき姿を思い描き、そのギャップを生んでいる課題を洗い出して、具体的なデータでエビデンスを出し、それに対してどんな手を打っていくのか、ということを考えています。そういった意味で、2020年度に社内申請を、2021年度に契約締結を、それぞれ順番に電子化してきました。

大きなものではないとはいえクラウドサインも導入やランニングのコストはかかってきますから、費用対効果を明らかにしたうえで社内や経営陣に説明していく必要がありました。そこで、電子化の効果が高そうな件数の多い類型の契約、あるいは印紙を貼る必要のある契約など、それらをよく扱う部署を洗い出し、契約総数や印紙額などを分析して費用対効果を見積もり、提示しました。

クラウドサインはプランによって月々のランニングコストが異なりますが、基本料金も送信1件あたりの金額も他のツールと比べて安価で、総合的に考えて最も低コストで運用できることがわかりました。それもクラウドサインを選ぶ決め手になりましたね。

総務部 法務管財室 山川雅弘様

業務効率を考慮し、送信フローはシンプルに

現在のクラウドサインの用途と、契約の流れを教えていただけますか。

山川様
主に開発部門の各部署における秘密保持契約、業務委託契約、開発委託契約などで使用しており、管理部門でも一部契約書で活用しています。契約のフローとしては、最初にワークフローシステム上で各部署の担当者が申請し、上長が承認すると、我々総務部で契約内容の審査を行います。それで問題がなければ、部署担当者から電子契約する旨と契約書ファイル、相手方の同意書をメールで総務部に送ってもらい、我々の方で契約書をクラウドサインで送信し、各部署と総務部の承認を経て相手先に届く、という流れです。

運用において工夫したところはあるでしょうか。

山川様
契約の電子化にあたっては、可能な限りスムーズに処理できるようにすることを心掛けました。当初はクラウドサインの宛先にもっと多くの社内の承認者を含めることも考えられていましたが、せっかく電子になったのに紙のときと同じような時間がかかっていては意味がありませんので、承認を求める人数は最小限にしています。

また、各部署の担当者が勝手に電子契約で締結しないように、総務部が送信することを基本としました。送信時の宛先の中には必ず総務部を入れ、いきなり相手方に契約書が届いてしまわないようガバナンスも徹底しています。

契約相手となる取引先には導入時にどういった説明をされましたか。

山川様
各部署から相手方に電子契約を提案するときに説明していますが、当社側の部署が電子契約についてまだ深く理解できていない場合もあるので、そのときは我々総務部が間に入り直接相手方に説明するなど、少しでも受け入れていただけるよう丁寧なサポートをしています。ただ、クラウドサインはたくさんの機能があるのにシンプルで使いやすいですし、弁護士ドットコムが用意している受信者用のマニュアル資料をお渡しするだけで、相手先もほとんどの方が戸惑うことなく操作できているようです。

最短1日で締結完了。契約業務の時短・省コスト化に高い効果

契約の電子化率など、具体的な導入の効果について教えていただければ。

山川様
今、社内で発生している契約書全体の2割程度が電子契約になっています。この数字は当然伸ばしていかなければなりませんが、個人的に事前に想定していた電子化率に近いと思っています。契約締結に至るまでのリードタイムはすごく短くなっていますね。紙の契約では平均的に2週間ほどかかるものが、電子契約になったことで2、3日、早ければ1日以内に完了することもあります。

社内からは導入後にどんな反応がありましたか。

山川様
かなりポジティブな意見が届いています。印紙の取り寄せや社印申請の必要がなくなったこと、先方との郵送による書類のやり取りが不要になったことなどは大きなメリットとして感じられているようです。クラウドサイン上で契約締結のステータスがはっきりわかるようになり、進捗管理をしやすくなったという声もありますね。

導入や社内普及を進めていくうえで難しく感じる部分はあったでしょうか。

山川様
部署によっては電子契約のメリットをまだ完全に理解してもらえていない、というところですね。社内での導入事例をイントラネットで紹介したり、我々から各部署に個別に連絡して電子契約のメリットを地道に伝えていったり、という活動で今は理解を少しずつ広げているところです。

なかには急いで契約しなければならないケースもあって、そういうものこそ電子契約で締結してほしいのですが、紙契約から脱却しきれていないのが実情です。電子契約はリードタイムを短縮できることが一番のメリットでもありますから、そこを訴求して社内普及をもっと進めていきたいと考えています。

本来の業務に集中してもらうためにもデジタルに

今後、クラウドサインをどのように活用していこうと考えているか、課題も含めて教えてください。

山川様
契約締結は基本的にはすべて電子契約にしたいですね。少なくとも法的に紙で書面作成が求められているもの以外は電子化したいと思っていますし、契約書以外にもクラウドサインを使えればと思っています。たとえば取締役会議事録です。各役員の押印が必要で、非常に時間がかかるものになっています。

紙の契約と電子契約の二重管理になっていて、紙の保管に手間がかかっているのも課題です。2020年度に社内申請を、2021年度に契約締結を電子化してきましたので、次は保管の部分をDXで改善できればと考えています。ワークフローシステムとクラウドサインの連携も、より利便性を高める手段の1つとして検討していきたいですね。

今のところは我々総務部がすべての契約書を確認し、送信しているため、今後契約件数が増えていったときに対応しきれなくなる可能性もあります。いずれは各部署で送信するなど、状況に応じて運用ルールを変えていく必要もあるかもしれません。

これからクラウドサインを導入、もしくは活用していきたいと考えている企業に向けてメッセージをいただければ。

山川様
契約を頻繁に結んでいる企業ほど、契約書作成の工数削減、リードタイムの短縮など、クラウドサインの導入効果は高くなると思います。無料で使い始められるフリープランもあって気軽に試せますし、弁護士ドットコムの担当の方も非常に親身になってサポートしてくださるので、ぜひ積極的にチャレンジしてみてほしいですね。

堀様
契約というのは相手先のある話で、我々だけが電子化したいからと言って即可能になるというわけではありません。そういうこともあって自動車業界では電子契約が広く活用されているとはまだ言いがたい状況ですが、今後は世の中の流れに合わせて電子化がどんどん進んでいくはずですから、今のうちに電子契約を導入しておきたいですよね。

バックオフィスを担う我々としては、開発部門のサポートにできる限りのリソースを割いて本来業務に集中できるようにする、ということが一番重要なことだったりします。そのためにも契約業務など事務的な部分の環境をデジタルで整えていくのは、非常に意義のあることだと考えています。

※掲載内容は取材当時のものです。

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