不動産業

お客様はIT化が遅れた不動産会社を選ばない。電子契約で時代に合った顧客体験の実現へ。

  • 2022年8月23日(火)

日神不動産株式会社
総務部 総務課

 

重要事項説明のオンライン化、いわゆる「IT重説」が可能になったのに続き、2022年5月には宅地建物取引業法(宅建業法)の改正で不動産の売買契約においても電子契約サービスの利用が可能になりました。これを機に契約の電子化を進める不動産会社が増えています。

お客様のニーズに沿った自社ブランドマンションを建築・販売する創業49年の老舗不動産会社、日神不動産もその1社。日神不動産には、紙の契約に強いこだわりを持っている従業員が少なくなかったにもかかわらず、法改正の施行当日から売買契約の電子化に対応しました。

そんな日神不動産が、どのように電子化を進めていったのか、お話を伺いました。

顧客に選ばれる会社になるため、電子化を推進

電子契約サービスの導入を検討することになったきっかけを教えてください。

IT重説が導入された2017年頃から、IT化については目を向けてきました。本格的に電子契約の導入について動き始めたのは、不動産取引の電子契約化を可能とする宅建業法の改正が2022年5月に施行されることが発表されたときからです。

しかし、不動産業界はデジタル化が遅れており、当社も例外ではありませんでしたので、当初、私が電子契約の導入を社内で提案した際は、本当に導入が可能なのか半信半疑な意見もありました。

社内の意識が変わったのは、2021年の年末頃です。他社が電子化を進めているという情報を得たことをきっかけに、当社も取り組んでいこうという形で一気に電子化に向けた動きが具体化されました。

電子契約に対して、御社としてはどのような期待感があったのでしょうか。

電子契約の導入により、お客様からの当社への信頼性と魅力を高めることができると考えました。

弊社のマンション販売の営業方法は主に2パターンあります。当社からお客様にお電話をかけてお声がけしたり、ご自宅を訪問していく開発営業と、チラシやインターネットなどをご覧いただいたお客様からお問い合わせいただく反響営業です。後者の、自ら積極的に動かれているお客様はご自身で情報収集を行い、複数の会社を比較されている傾向が強いです。他社と比較された際、IT化が「遅れている会社」よりも、「進んでいる会社」のほうが信頼できそうだと感じられるのではないかと思います。

また、電子契約の場合は印紙が不要になりますので、紙での契約しかできない会社よりもコストを下げることができます。つまり、電子契約は競合対策のひとつになると考えています。

他に、紙の契約書における業務上の課題感はありましたか。

そもそも契約書全てに押印するのに手間がかかること。そして保管場所が必要になることです。不動産に関わる契約は1件1件の書類が多いですし、47年という歴史があると書類の量も莫大なものになります。法改正の前から保管については課題になっていましたので、クラウドサインの導入でそこも一気に解決できると考えました。

数ある電子契約サービスのなかからクラウドサインを選ぶ決め手となったのは何でしたか。

導入検討時は改正法の施行前でしたので、当然ながら他社での事例はありません。法律的に本当に大丈夫なのか、という不安はやはりありました。したがって、そうした法律上の懸念点について根拠と確証をもってきちんと説明されているサービスであるかどうかを重視しました。

クラウドサインは法律上の懸念点をしっかりクリアにしていましたし、国内シェアナンバーワンで導入企業も多い。契約相手となるお客様にとっては知名度の高いサービスの方が安心感があるだろうと思ったのも、クラウドサインを選んだ理由です。

あと、細かいですが、クラウドサインには契約書を「削除」する機能が存在しないところが良いと感じています。お客様と締結した契約書を削除してしまうような作業ミスが絶対に起こり得ないという点が、削除機能がある他サービスと比較して安心だと感じました。

お客様をお待たせしないスムーズな契約締結フローを実現

クラウドサインはどのような用途で利用していますか。

マンション販売において、一般のお客様との売買契約にクラウドサインを利用しています。2022年5月18日の法改正施行当日から利用できるように、あらかじめ準備してすぐにスタートできるようにしました。また、土地の仕入れや建築などを手がける開発事業部での契約や、マンション建設にあたって必要になる手続書類などでも活用を進めているところです。

運用において工夫した点はありますか。

売買契約のときは対面でお客様とお打ち合わせして、その場でご契約内容が決まることが多いんです。

そこで、クラウドサイン導入後はGoogle ドライブのスプレッドシートで契約書のひな形を作っておき、営業スタッフがお客様と話しながら必要事項を入力して契約書を完成させるようにしました。完成した契約書をPDF化し、クラウドサインで当社の決裁権限者とお客様宛てに送信する、という流れにしています。今までは契約書が書面だったため、社内決済に早くても丸1日かかっておりましたが、クラウドサインは契約書(PDFデータ)をメールで送れるため、社内決済が数分で済み、お客様をお待たせせずに契約締結をスムーズに行うことができるようになりました。

クラウドサインを導入し、社内普及を進めていくところで苦労したことは?

1つは、クラウドサインの運用における社内体制を決めるところです。営業部門としては、契約業務をどれだけシンプルにできるかが大事ですが、私たち管理部門側の視点としては、どれだけリスクを減らせるかに重点を置きます。そこは相反する部分なので調整が難しかったですね。また、日頃から電子的な方法での申込みや契約に慣れ親しんでいる若い世代は比較的スムーズに電子契約を受け入れられたのですが、「契約といえば紙と印鑑」という認識をもつ営業部員にとっては、電子契約では契約の重みを感じられないという感覚的な理由での抵抗が大きかったようです。

それに対しては実利的なメリットを押し出すのがいいと思い、電子化することでお客様の印紙代がかからなくなることを社内に訴えました。マンションは3000万円以上、ときには1億円を超えるような大きな買い物です。印紙代もその価格に伴って上がり、数万円になることもあります。しかし、電子化すれば印紙代はかかりません。コストを抑えられることはセールストークとして成立するので、お客様だけでなく営業部にもメリットがあります。

クラウドサイン側からの導入・社内普及のサポートはいかがだったでしょうか。

サポートはとても良かったです。こちらが「こういう資料が欲しい」とお願いするとすぐに準備してもらえましたし、参考資料を提供していただいて、非常に助かりました。

不動産業界だと、電子化にあたっては宅建業法をはじめ複雑な個別の法律に照らし合わせながら最適な運用方法を決めていかなければなりません。しかし、クラウドサインの担当の方はそのあたりの法律もしっかり把握したうえで、適切に対応していただいたのでうれしかったです。

「不動産の契約は紙がいい」は業界の固定観念

導入効果としてはいかがでしょうか。現状の電子化率などを教えてください。

不動産の売買契約については今のところ7~8割が電子化できています。スマートフォンを持っていないご高齢の方、もしくは不動産の契約はやっぱり紙の方が安心、と思われている方との契約が残りの2~3割ですね。印紙代ももちろん削減できました。もともと紙の契約をしていたときはお客様と印紙代を折半しており、年間の印紙費用が400~500万円ほどになっておりました。それが電子契約化したことでゼロになっています。また営業部門からは「思ったより簡単に契約できた」という声をもらっていて、好感触は得られていますね。

お客様の反応はいかがでしたか。

電子契約は非常にスムーズに受け入れていただけました。私たちは、クラウドサイン導入前は「不動産のような大きな買い物は、紙契約がいいと考えるお客様が多いのではないか」と思っていたのですが、実際のところお客様はそうは全く思っておらず、「紙契約がいい」というのは完全に社内や業界の固定観念だったのだと思わされましたね。

いずれは電子契約が当たり前に。今のうちに対応を

今後のクラウドサインの活用方針についてはどのようにお考えですか。

年間の印紙代が1000万円ほどかかっている開発事業部でも、契約の電子化を進めてコスト削減をしたいと思っています。営業部でも売買契約書以外に、重要事項説明書面などの電子化も進めていき、よりお客様の負担を減らしていきたいです。また、社内においても、取締役会議事録や労務関係の契約書などの電子化をクラウドサインで進めて、紙書類を印刷・保管するような業務はどんどんなくしていきたいです。

これからクラウドサインを活用していきたいと考えている他の企業に向けて、メッセージがありましたら。

不動産業界の人間が考えているほど、お客様は紙の契約書にこだわっていないということを今回すごく実感しました。

とは言え、長く続いてきた慣習ですので、デジタル化を社員に受け入れてもらうことが簡単ではないことは、私も実体験として理解しています。それについては、印紙代が省けるなどのメリットを提示しつつ、既存のワークフローに無理なく組み込めるように工夫して、社内の理解を得ながら進めていくことが大事です。

不動産関連の契約書は電子化が可能になってから日が浅いので、事例は多くありませんが、すでに大手建設会社でも電子契約サービスの導入が進んでいますから、いずれはこの業界も電子契約が当たり前になるでしょう。今のうちに早めに電子化に向けて動き出すことをおすすめします。

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