電子契約の運用ノウハウ

電子契約のデメリット—導入済み企業に聞いた電子契約の注意点とその解決策・対処法

電子契約のデメリット—導入済み企業に聞いた電子契約の注意点とその解決策・対処法

電子契約にはメリットばかりでなく、デメリットが存在することは否定できません。しかし、その解決策・対処法を知っておくことで、導入後の不安を解消することができます。この記事では、企業が電子契約を導入する際に、事前に知っておきたいデメリットについて詳しく解説していますので、電子契約の導入を検討中の方は参考にしてみてください。

「電子契約のリスク分析—契約書への押印との比較」
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本資料は、書面契約と電子契約をわかりやすく比較しながらリスク分析した無料ホワイトペーパーです。電子契約の導入を検討している方は、導入前の不安や疑問を解消するためにダウンロードしてご活用ください。

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電子契約のデメリット・注意点とその解決策・対処法

デジタル庁を司令塔に、政府を挙げて官民一体でデジタル化が進む中、そのメリットが最もわかりやすいのが、従来の紙とハンコを撲滅する契約のデジタル化です。契約の方法を押印から電子署名に変えることで、以下のようなメリットを得られます。

  • 契約締結スピードが数週間から数時間に
  • 郵送費・印刷費・収入印紙等のコストがゼロに
  • 検索性が向上し物理的な保管スペースが不要に

一方で、こうした電子契約を採用することのメリットの裏には、乗り越えなければならないデメリットや注意点があるのも事実です。

本記事では、そうした電子契約のデメリットや注意点をまとめた上で、すでに電子契約を採用している企業がそれをどう解決しどう対処してきたかを、具体的事例とともにご紹介します。なお、電子契約のメリットを確認したい方は「電子契約のメリットとは?デメリットと注意点を解説」も参考にしてみてください。

導入済み企業に聞いた電子契約のデメリットTOP5

押印ワークフローを変更するための社内調整が面倒・辛い

電子契約採用企業へのアンケートではあまりに表沙汰にはならないものの、事例インタビューや導入コンサルティングの過程で深くお話を伺う中でデメリットのNo.1と言っても良いほど寄せられるのが、「社内調整が面倒・辛い」というご担当者の声です。

ITツールを導入する際に、社員のITリテラシーが追いつかないことを懸念されるお客様は少なくありません。しかし、標準的なクラウド型電子契約サービスであれば、

  1. 契約書ファイルをアップロードする
  2. 相手方(および必要に応じ社内承認者)の電子メールアドレスを入力する
  3. 内容確認の上、送信ボタンを押す

この程度の簡単な操作で利用することができます。スマートフォンでLINEやSNSを使い、PCではWordやExcelを日常的に利用している一般的なオフィスワーカーであれば、操作方法そのものでつまづくことは考えられません。

それでも社内で抵抗を受けるのは、実は新しいツールの操作を強制されることに対してではなく、これまで慣れ親しんだ押印のワークフローが変更になること、それによって自分の業務の進め方を変えたくないという「現状維持バイアス」が原因であることがほとんどです。

取引先から利用の承諾を得るための調整コストがかかる

自社では電子契約を導入したものの、活用がなかなか進まずに頓挫してしまうお客様からデメリットとして多く寄せられるのが、「取引先の抵抗とその調整コスト」です。

本来、信頼関係のある取引先からの真摯な依頼であれば、それなりの理由がなければお断りはされないはずです。以前は「法務部NG」が水戸黄門の印籠のように言われましたが、2020年以降は電子署名法の解釈が明らかとなり、この点は解消されています。

それでも調整コストがかかる理由としては、2.1にも通じますが、先方担当者の現状維持バイアスを理由とする抵抗というのが、そのほとんどの原因です。

契約締結日をバックデートできない

電子契約にはタイムスタンプが付与されるために、同意をした日時が正確に電子ファイルに記録されます。

このことが、「契約締結の実務の遅れをごまかすために、◯月×日に契約が成立していたことにしておきたい」といった、バックデート(実際に契約を締結した日付よりも過去の日付を契約締結日として契約書に記載する行為)を白日の元に晒してしまうことを、デメリットと感じるご担当者も少なくありません。

監査法人等、第三者を相手に帳簿書類の正確性を説明しなければならない経理・法務担当者からは、こうした懸念の声をいただくこともあります。

法令により電子契約が利用できない契約類型が一部存在する

取引の安全や消費者保護の観点から、法令により電子契約が利用できない類型が一部に存在します。

一般の事業会社で接する契約類型の中で、電子契約が利用できない主なものを挙げると、以下のとおりとなっています。

文書名 根拠法令 改正法施行予定
事業用定期借地契約 借地借家法23条
企業担保権の設定又は変更を目的とする契約 企業担保法3条
任意後見契約書 任意後見契約に関する法律3条
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条 2023年6月

改正法施行まで、こうした契約を締結することの多い企業にとっては、デメリットと言えるかもしれません。

一度導入した電子契約システムを後で変更することが難しい

ITシステムが買い切り・売り切りだった時代は終わり、電子契約サービスの多くも、SaaSと呼ばれる長期利用を前提としたサブスクリプションサービスで提供されています。

このことにより、ひとたび電子契約サービスの利用を開始すると、もしその電子契約サービスの選択が自社にとって正しくなかった・失敗であった場合に、他のサービスに簡単に乗り換えられないのではないか、という不安が先立つものです。

実際、電子契約サービスによってはそのような「ベンダーロックイン」状態が発生しかねない仕様を採用したものもあり、デメリットとなりうるのは事実です。

電子契約導入済み企業はデメリットをどう乗り越えたか—導入事例に見る対処法・解決策

社内の現状維持バイアスに対しては議論から逃げずすべてを吐き出してもらう

電子契約をすでに採用している企業は、これらのデメリットをどのようにクリアしてきたのでしょうか、

まず、(創業当初から電子契約を採用しない限り)どの企業でも遭遇するであろう現状維持バイアスに対しては、そのような反対意見から逃げず、すべてを吐き出してもらうことが重要です。導入担当者は、一旦それらを受け止めた上で整理をし、デメリットに対する批判についてはメリットもあることを社内関係者にわかりやすく伝え、全社最適に向けて理解を求めていく役割を担うこととなります。

この点については、以下ご紹介する社歴の長い不動産業や学校法人等での導入事例が参考になります。さらにクラウドサインでは、豊富な導入サポート経験に基づき、社内での議論の整理や説明会実施をお手伝いする「導入コンサルティング」も提供しています。

お客様はIT化が遅れた不動産会社を選ばない。電子契約で時代に合った顧客体験の実現へ。(日神不動産株式会社)

多様化する事務業務を電子契約で効率化。DXで大学経営の差別化を図る(学校法人関西大学)

取引先との契約は類型ごとに細分化した上で電子契約への移行を提案する

取引先さまも、電子契約導入を成功させるための重要なステークホルダーです。電子契約を導入することが取引先にとってメリットがなく、デメリットしかないと思われてしまえば、自社がどんなに電子契約導入に本気でも、その取引先との間ではしばらく利用できなくなってしまいます。

そうならないようにするために、電子契約に懐疑的な取引先を懐柔するコツとして先達がアドバイスするのは、「取引先との契約書をすべて一律で電子化依頼するのではなく、一部の契約類型に絞って移行を提案する」ことです。

一つの取引先との間でも、契約類型ごとに細分化してみると

  • 秘密保持契約書
  • 取引基本契約書
  • 注文書/注文請書
  • 覚書

のように、さまざまな契約類型があるのが通常です。このすべてについて電子契約化を提案するのではなく、例えば、通数が多く、印紙代の削減等双方にメリットが確実にある注文書/注文請書だけ電子化を認めていただくよう交渉する、ということです。

クラウドサインでは、このような交渉方法が功を奏して電子契約の活用が進んだ企業の事例も多く有しています。

導入1年で数千件の契約を電子化。三菱地所が電子契約をスムーズに社内普及させた理由とは。(三菱地所株式会社)

収入印紙代を節約 – 電子契約書で経費削減に(株式会社アペックス)

契約締結日をバックデートできないことは不正防止にとって利点

確かに、書面と押印を用いれば(押印そのものには時刻を記録する機能がないために)バックデートは簡単にできてしまいます。逆に言えば、押印とは、いつ押印作業を行ったかが不明確になるという最大のリスクを産む行為とも言えます。契約が存在しなかった日にあったことにすれば、それが判明すれば契約書に書かれている内容もすべて虚偽だったということになり、企業のコンプライアンス・信頼を失墜させる大事件です。

だからこそ、押印を社員が代行することの多い大企業では、内部統制のために押印申請書を作成し、押印作業日を記録します。押印に足りない機能を補完するために、わざわざ紙を生産している馬鹿馬鹿しい状態とも言えます。

大前提として、契約日のバックデートは避けるべきです。どうしても契約締結日を遡及させる必要があれば、

本契約は、****年**月**日に遡及して適用する。

といった遡及適用文言を契約書に入れて、現実の契約締結日(契約書作成作業日)との整合性を担保すべきです。

なお、契約日のバックデートについては「電子契約の締結日問題を解決—タイムスタンプとのズレは「バックデート」にあたるか」でも解説していますので、気になる方はご一読ください。

電子契約に対する利用規制は特殊な取引を除いてほとんど解消された

電子契約が利用できない契約類型は、かつては少なくありませんでした。しかし、2020年以降政府が推し進めてきたデジタル改革によって、国や地方自治体との契約を含む、ほとんどの契約書で電子契約が利用可能となりました。

また、現在では利用ができない消費者との特定商取引における契約についても、2023年をめどに、一定の条件で電子契約の利用が認められる予定です。

現在では、電子契約に対する利用規制は、特殊な取引を除いてほぼ解消されたと言ってよく、このデメリットは過去のものとなりました。

電子化に規制が残る文書・電子契約化できない契約書と契約類型のまとめリスト

他社サービスへの移行が困難なベンダーロックイン型電子契約システムの見分け方を知っておく

電子契約サービスの選定にあたり、実は最も注意すべき点が、ベンダーロックインされかねないサービスの存在です。では、そうしたサービスはどのように見分ければ良いのでしょうか。

ほとんどの電子契約サービスでは、PDFファイルをアップロードし、そこに電子署名とタイムスタンプを付与する仕組みを採用しています。日本で普及する電子契約サービスも、ほとんどがこの方式です。

しかし一部のサービスでは、「電子契約サービス事業者名のみが記録される形式で、クラウド上にあるPDFファイルをダウンロードするタイミングで、長期署名ではない方式で電子署名する」ものがあります。このようなサービスには注意が必要です。なぜなら、「誰が・いつ・その契約に同意したか」という原本としての記録は(PDFファイルではなく)クラウドサーバー上にしか残っておらず、電子ファイルを他のサービスに移行させても、最も重要な当事者の意思表示の証拠としての電子署名がファイル上には残らないためです。

電子契約サービスを採用する際には、

  • 署名時に生成される契約締結済みファイル上に、契約当事者名が記録される形で電子署名が記録されるか(当事者指示型か)
  • 当該ファイルを他のクラウドサービスに保存してもその記録が長期間消えないか(長期署名が付与されているか)

この2点は、確認しておくことをおすすめします。

電子契約サービスを比較する際の3つのポイント —おすすめの電子契約サービス比較サイトも紹介

電子契約に関する多くのデメリットは最新の対処方法で解決可能

以上、電子契約のデメリットとその解決策・対処法について、具体的な企業の声や事例とともにご紹介しました。電子契約を実際に導入するまでは、デメリットを必要以上に不安に感じ、導入決定を先延ばしにしがちです。しかし、すでに多くの企業が電子契約を導入し、紙に戻る企業が発生していないのを見ればわかるとおり、乗り越えられないデメリットはほとんどありません。

なお、クラウドサインでは電子契約の代表的なリスクを把握しておきたい方に向けた資料「電子契約のリスク分析—契約書への押印との比較」をご用意しています。

当資料では、電子契約導入時に抱きやすい不安やお悩みを解消いただけるよう以下の内容を解説しています。

  • 電子契約と書面契約のリスク比較
  • 電子契約の法的紛争リスク
  • 電子契約の情報セキュリティリスク
  • 電子契約の不安を新しい法解釈とクラウド技術で克服する方法

以下リンクから無料でダウンロードできますので、電子契約を検討する際の参考資料としてご一読ください。

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この記事を書いたライター

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弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部リーガルデザインチーム 橋詰卓司

弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部マーケティング部および政策企画室所属。電気通信業、人材サービス業、Webサービス業ベンチャー、スマホエンターテインメントサービス業など上場・非上場問わず大小様々な企業で法務を担当。主要な著書として、『会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A』(日本加除出版、2021)、『良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方』(技術評論社、2019年)などがある。

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